内縁関係で家を買うときの名義・相続リスクとお金の分け方

内縁(事実婚)で家を買う場合、資金の出し方だけでなく「不動産の名義(登記)」「住宅ローンの契約」「相続」が強く結びつきます。内縁パートナーは法律上の相続人に含まれないため、万一が起きたときに「住み続けられない」「家の持分が相続人に移る」「お金を出したのに権利が残らない」といった問題が起こり得ます。
国税庁も、内縁関係の人は相続人に含まれないと明記しています。

このコラムでは、住宅購入を考え始めた方でも整理できるように、内縁で家を買うときの名義の決め方、相続リスク、税金の注意点、お金の分け方(精算の考え方)を、順番に説明します。

目次

1. 最初にそろえる3つの情報(出資・名義・ローン)

内縁での住宅購入は、次の3つが一致しているかどうかで安全性が決まります。

出資(お金):頭金・諸費用・毎月返済を、誰がいくら負担するか
名義(登記):土地と建物の名義、共有なら持分(割合)がどうなっているか
ローン(契約):借入人は誰か、連帯保証・連帯債務の有無、ペアローンかどうか

この3点がズレると、別れたときの精算や、死亡時の相続で問題が大きくなります。
内縁では「家族だから大丈夫」という整理は成立しません。

2. 名義・共有名義・持分とは何か

不動産は「登記名義」で所有者が決まります。
内縁で一緒に住んでいても、登記名義に名前がなければ、所有権は発生しません。

共有名義の場合は「持分(何%の所有か)」で権利が分かれます。たとえば、Aが60%、Bが40%の持分で登記していれば、その割合で権利を持ちます。土地と建物の名義は別々に設定できるため、「土地はA単独、建物は共有」などの形もあり得ます。

3. お金の分け方の基本:持分は負担割合に合わせる

内縁で住宅購入資金を分担する場合、原則として 持分(登記の割合)を実際の負担割合に合わせる考え方が重要です。

負担割合と持分が違うと、税務上「贈与」があったと扱われ、贈与税の問題が出ることがあります。国税庁は、共働き夫婦の住宅購入例として、負担割合と持分割合が異なる場合に贈与税の問題が生じ得ること、負担割合に応じた登記であれば問題が生じないことを説明しています。
この考え方は「夫婦だから特別」ではなく、財産の移転として見られる点が本質なので、内縁関係でも同様に注意が必要です。

よくあるズレの例

総額3,000万円の家を購入し、Aが2,000万円、Bが1,000万円を負担したのに、登記を50%ずつにすると、Bは実負担より大きい権利を取得したと見なされる可能性があります。国税庁の事例では、この差額部分が贈与と整理され得る、と説明されています。

4. 住宅ローンの組み方(単独・収入合算・連帯債務・ペアローン)

住宅ローンの形は大きく分けて次の4つです。実際に内縁を対象にできるかどうか、必要書類は金融機関ごとに異なるため、ここでは「仕組み」を整理します。取り扱い可否は、必ず借入予定先に確認してください。

単独ローン

借入人が1人です。名義も単独にしやすい一方で、もう一方が返済を負担すると「名義と負担のズレ」が起こりやすくなります。

収入合算

主な借入人は1人で、審査にパートナーの収入を加える方式です。契約形態(連帯保証など)は商品によって異なります。

連帯債務

1本のローンを2人で負う形です。返済責任が強く結びつくため、別れたときの清算ルールを先に決める必要があります。

ペアローン

2人がそれぞれ主債務者としてローンを組み、互いに保証関係が入る形が一般的です。ローンが2本になるため、団信や控除、諸費用の整理も2人分で考える必要があります。

5. 団信(団体信用生命保険)で守れる範囲を確認する

団信は、死亡や所定の高度障害など、契約条件に該当した場合にローン残高が整理される仕組みです。団信の保障範囲は商品で違います。

内縁で重要なのは、次の確認です。

  • 誰のローンに、どの団信が付いているか
  • 片方に万一があったとき、もう片方のローンや生活費は残るか
  • ペアローンや連帯債務で、保障の対象がどう設計されているか

この部分は契約書・商品説明書で確定します。記事内で一般論以上に断定できないため、借入先で必ず確認してください。

6. 相続の大前提:内縁パートナーは相続人ではない

内縁で最大の違いはここです。国税庁は「内縁関係の人は、相続人に含まれません」と明記しています。
この前提により、次のリスクが発生します。

単独名義だと、残されたパートナーは相続で取得できない

家がA単独名義で、Aが死亡した場合、B(内縁パートナー)は相続人ではないため、相続で家を取得する前提に立てません。
相続で家を取得するのは、法律上の相続人(子、直系尊属、兄弟姉妹など)です。

共有名義でも、亡くなった人の持分は相続人側に移る

共有名義であっても、亡くなった人の持分は相続人が承継します。結果として、残された内縁パートナーが「相続人と共有状態」になる可能性があります。


7. 「住み続ける」リスク:配偶者の居住権は前提にできない

法律婚の配偶者には、相続の場面で住まいを守るための制度があります。法務省は、残された配偶者が一定期間無償で住み続けられる仕組み(配偶者短期居住権など)を説明しています。
また、国税庁の解説資料でも、配偶者居住権は「被相続人の配偶者」を前提にした権利として整理されています。

内縁は「法律上の配偶者」ではないため、これらの配偶者向け制度を前提に住み続ける設計はできません。住まいの確保を重視する場合は、名義・遺言・保険などを含めて、別の手当てが必要です。

8. 税金の論点:贈与税・相続税の加算・配偶者の軽減

税金は「名義の設計」と直結します。ここでは判断の軸だけを整理します。個別の税務判断は税理士に確認してください。

贈与税:負担割合と持分がズレると問題が出やすい

前述のとおり、国税庁は負担割合と登記持分が違う場合に贈与税の問題が生じ得ると説明しています。
内縁でも同じ構造のため、登記前に負担割合を確定させることが重要です。

相続税:配偶者の税額軽減は「配偶者」が対象

相続税の配偶者軽減(いわゆる1億6,000万円まで等)は「被相続人の配偶者」が対象です。
内縁パートナーはここでいう「配偶者」ではないため、同じ前提では使えません。

相続税:2割加算に該当する可能性

相続や遺贈で財産を取得した人が「被相続人の一親等の血族および配偶者以外」である場合、相続税額に2割相当額が加算される、と国税庁は説明しています。
内縁パートナーが遺贈などで財産を取得する形は、この論点が出る可能性があります。該当の有無は個別事情で変わるため、税理士へ確認してください。

9. 対策の考え方:家を守る対策/お金を公平にする対策

内縁での対策は「家(住まい)を守る」対策と、「お金を公平に分ける」対策を分けて考えると整理しやすくなります。

家(住まい)を守る対策の方向性

  • 名義(持分)を実負担に合わせて設計する
  • 遺言で遺贈を検討する(相続人がいる場合は調整が必要になる場合があります)
  • 生命保険の受取人設計を検討する(受取人にできる範囲は契約先で確認が必要です)

お金を公平に分ける対策の方向性(別れた場合も含む)

  • 頭金・諸費用・返済の分担、精算方法、売却時の分け方を文書化する
  • 送金履歴・契約書・見積書・領収書を保管する
  • 共有にする場合は「出口(売却/持分買取/住み続ける条件)」を先に決める

共有物は、共有者がいつでも分割を請求できる、という原則があります(一定期間の不分割契約で制限できる場合があります)。共有を選ぶ場合は、分割請求が現実に問題になる場面を想定した取り決めが重要です。

10. 相談が増えやすい典型パターン(事例)

事例1:家は単独名義、返済は実質的に2人で負担

名義と負担のズレが大きくなり、贈与税の論点や、別れたときの精算が難しくなります。
国税庁は、負担割合と登記持分が異なる場合に贈与税の問題が生じ得ると説明しています。

事例2:共有名義だが、死亡で相続人と共有状態になる

内縁パートナーは相続人ではないため、亡くなった人の持分は相続人が承継します。
相続人との共有は、売却や居住継続の交渉が必要になりやすい形です。

事例3:遺贈を予定しているが、相続税の加算を見落としている

遺贈で内縁パートナーが財産を取得する場合、相続税額の2割加算が論点になる可能性があります。
国税庁は、配偶者・一親等の血族以外が取得した場合に2割相当額が加算されると説明しています。

11. まとめ

内縁(事実婚)で家を買う場合、登記名義と資金負担、住宅ローン契約を一致させる設計が重要です。
内縁パートナーは相続人に含まれないため、死亡時に家を承継できる前提に立てません。
また、配偶者向けの相続税軽減は「配偶者」が対象であり、内縁は同じ前提で使えません。

内縁での住宅購入は、事前の合意と記録でリスクを下げられます。名義(持分)の決め方、負担割合、精算ルール、万一のときの住まいの確保まで、購入前にまとめて整理してください。税務の個別判断が必要な部分は税理士に確認し、登記や契約の整備は専門家へ相談してください。

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この記事を書いた人

行政書士(静岡県行政書士会所属) ・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 ・宅地建物取引士
住宅業界のキャリアは30年以上。住宅販売から情報システムの企画・運用からマーケティングまで幅広く担当。
宅地建物取引士として分譲地・分譲住宅の販売にも携わってきました。
ホームページ・各種SNSなどのWEB制作サービスも可能です。
趣味は、陸上競技。マスターズ陸上の短距離(60m、100m)
静岡マスターズ陸上M55クラスの静岡県記録保持者。
各地の陸上競技場で走っています。

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